【東京編】チャンピオン日記!キックボクシングとの出会い
「あれが魔裟斗だよ」後楽園ホールのトイレですれ違った少年(のように見えた)を指差してM君が言った。中学3年生ぐらいに見えた魔裟斗選手対して、「まだ子供じゃないか?勝てるだろ!?」と勝手に思ったのである(大変失礼)。
時代はK-1ヘビー級全盛で、ピーターアーツやアーネストホースが大活躍していた。ただ僕自身は全く格闘技に興味がなく、K-1 WORLD GPも見たことがなかった。友人のM君は大学のボクシング部に所属していて、その恵まれた体格とセンスから、K-1ヘビー級に参戦している外国人選手たちのスパーリングパートナーとして、世界最大手の空手道場に呼ばれていた。そしてこれまでスパーリングパートナーとして活躍してくれたお礼に、M君はその空手道場からキックボクシングのプロとしてデビューすることになっていたのだ。そのデビュー戦が全日本キックボクシング連盟のリングで行われることになり、今回二人で視察に来たのだった。
M君とは仲が良く、よく一緒に遊びに出かけていた。この視察の1週間か2週間前にも渋谷のクラブへ一緒に出かけて、軽くお酒を飲んでいた。その時に、たまたま知り合った女の子の内の一人が「魔裟斗がタイプだ」と言っていたのだ。僕は「?」という感じで全く誰だか分らなかった。僕だけでなく、その当時まだ一般の人は誰も魔裟斗選手を知らなかったと思う。K-1MAX(70kgの大会)も始まっていなかったし、キックボクシングという競技はマイナーで、試合会場にはガラの悪い人や酔っぱらった人もたくさんいた。地上波のテレビにも一般の雑誌にも登場していない彼を、なぜその女の子が知っていたのか…。今思うと不思議である。
M君には以前から「お前もキックボクシングやれば?」と勧められていた。身長190cmで小さい頃からサッカーや陸上、水泳などの大会で常に入賞していたので、運動神経はいい方だと思う。でも中々やろうという気にはならなかった。理由は分からないが、単純に興味がなかったのだろう。それがあの日から一転したのだ。そう魔裟斗選手に勝てると思ったあの日からである。