【東京編】チャンピオン日記!キックボクシングとの出会い(続き)
後楽園ホールのトイレで魔裟斗選手とすれ違って、勝手に「勝てそう」と思った僕は、次の日からジム探しを始めた。その当時僕は丸ノ内線後楽園駅隣の茗荷谷駅近くに住んでいた。アルバイト先は水道橋駅、大学は御茶ノ水駅が最寄り駅だったので、このあたり一帯(後楽園~水道橋~御茶ノ水)でジムを探すことにした。すると水道橋駅のすぐ近くに、ちょうど新しくオープンしたジムがあったのだ。上下関係の厳しいジムや古臭い考え方のジムが嫌だった僕は、ポップな雰囲気の広告を見て「ここ、良さそうだな」と感じ、早速見学に行ったのである。
見学に行ったこのジムは、確か2Fが格闘技ショップで3Fがキックボクシングのスペース、4Fが柔術のスペースとなっていた。2Fにあった格闘技ショップの社長がジムを経営していたのだ。ジムの案内は僕とさほど年齢の変わらない、若いトレーナーさんがしてくれた。その当時のキックボクシングジムやボクシングジムは、まだまだ初心者が立ち入りにくい雰囲気があったと思うが、そのトレーナーさんは気さくで、丁寧に案内してくれた。キックボクシングについてもいろいろ詳しそうだった。「この人ならちゃんと教えてくれそうだな」そう思った僕はこのジムへの入会を決めたのだ。
僕はジムに入る前から「絶対世界チャンピオンになる!」という意志を持っていた。世界チャンピオンを目指さないなら、キックボクシングをやる意味がないと考えていたのだ。魔裟斗選手のことはキックボクシングを始めるきっかけとなったが、彼に挑んで勝つという気持ちではなく、目指すのはあくまで世界チャンピオンだった。ただ僕が入会したこのジムは、プロの選手を育るつもりはなかったと思う。社長さんに「プロで試合をしたい」と話をした時も「えっ!?プロでやりたいの?」といった感じであった。なぜなら、当時のプロにはケガをして痛い思いをするのに、たいしたファイトマネーももらえず、格闘技に時間を費やして就職できずに人生を棒に振るという人がたくさんいたからだ。
しかし、そんなんことで僕の意志は変わるはずもなく「じゃあ、まずここでしっかり基礎を身につけて、プロ志向のジムに移籍しよう」と考えた。それにある程度できる経験者になれば、プロ向けのジムでも気にかけてもらえるはずだと思ったので、今の自分にはこのジムがちょうどいいだろうという結論に至ったのだ。こうして僕のキック人生が始まった。