【東京編】チャンピオン日記!その名はランバー・ソムデートM16!(続き)

ランバー・ソムデートM16。元タイ国ルンピニースタジアムフライ級2位のムエタイ選手だ。好戦的なファイトスタイルと観客を楽しませるパフォーマンスで、タイだけでなく日本でも人気を博した。日本では日本のチャンピオンクラスのキックボクサーを次々と1ラウンドでKOし、負けなしである。

そのランバー・ソムデートM16選手が、僕のいるジムでトレーナーをすることになった。そして、トレーナーとして来た初日の一番初めに会った練習生が僕だったのだ。僕は毎日ジムへ来ているし、一日中ジムで練習していたので、彼とはすぐに仲良くなった。彼は僕のことを「タケシ」と呼んでいた。だからムエタイの世界では、それ以来ずっと「タケシ」と呼ばれ続けることになる。

だが僕の名前は「ケン」だ。漢字では「健」と書くので、偶然「タケシ」とも読める。最初は「何でタケシなんだ?」「もっと他にカッコいい名前があるだろ?」と思っていた。しかし、よくよく聞いてみると、中々いい意味があった。タイ人はよく人の見た目であだ名を付ける。例えば「ウワン」とか「ヤーオ」といったあだ名だ。「ウワン」とは日本語で「太った」という意味だ。日本では問題がありそうなあだ名だが、タイではよく耳にする。「ヤーオ」とは「長い」という意味で、背の高い人のあだ名としてよく使われる。

では「タケシ」とは…。どうやら「タケシ」の「タケ」は日本語の「竹」から付けたみたいだ。僕が竹のように背が高く、すらっとした体型だったので竹を連想したようだ。ただ、見た目だけでなく、それ以外にも彼の特別な思いがあった。「竹は細くて長いが、とても丈夫だろ?試合でどんな攻撃を受けても打たれ強い。それに竹はよくしなるから、鋭い攻撃ができる」と彼は真顔で僕に話してくいれた。彼はそういった思いを込めて「タケシ」と命名したのだ。後は恐らく、タイでも放送されていた日本のアニメの代表格ドラえもんのジャイアンの名前が「タケシ」だったから、馴染みがあって「タケシ」になったと思われる。

とにかくこうして彼と出会ったことで、僕の気持ちがさらにムエタイへ傾倒したのは言うまでもない。しかし、この時の僕はまだ全く考えていなかった。将来自分がタイのジムに住み着いてまで、何年もムエタイ漬けの生活を送るなんて…。

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